銚子半島周辺の地質見学会 2007/06/02〜03
 関東支部では標記地質見学会を6月2日(土)〜3日(日)に開催しました.

銚子半島周辺の地質見学会に参加して
        早稲田大学教育学部 4年 早川達也
 日本地質学会関東支部の企画した銚子半島周辺の地質見学会が6月2日,3日に行われた.私はこの4月に日本地質学会に入会したばかりで,学会の主催する巡検には初めての参加であった.当日は晴天に恵まれたこともあり,遠くの地形まで見渡せる絶好の日和であった.茨城大学の安藤寿男先生の案内のもと,海岸露頭を中心として,堆積物,堆積岩の観察を行った.
 1日目は銚子半島の海岸に露出する,下部中新統の夫婦ヶ鼻層と犬吠層群並びに下部白亜系の銚子層群において主に堆積岩を見て回った.堆積岩中にはさまざまな堆積構造が保存されていたが,中でも目を見張ったのは犬吠埼に分布する銚子層群犬吠埼層のハンモック状斜交層理(HCS)である.HCSは嵐の波浪により形成される堆積構造であるが,1波長が1m以上ある独特のうねりが複数重なり合う様子には言葉を失ってしまった.この場所は国指定の天然記念物となっており,「犬吠崎の白亜紀浅海堆積物」と書かれた石碑と堆積物に関する詳しい案内板が設置されていた.堆積学の教科書等で堆積構造については学んできたが,実物を見たときにさてすぐにそれと判断できるかというと,そういうわけではない.実際,犬吠埼の露頭に向かう斜面から展望したときには,どれがHCSなのか安藤先生の指差す先を見ても分からなかったのが正直なところであった.しかし,一通り観察したあとの帰りに同じ場所を見たときには,全体のうねりの様子から確かにHCSであると納得することができたのである.実際に自分の目で見る大切さはもとより,どこに注目し,何を見ればいいのかを指導する人の存在が自らの学力を上げるためには必要なのだと強く感じた瞬間あった.
 2日目は主に九十九里浜の東端から東方へと延びる屏風ヶ浦に沿って,鮮新統から中部更新統の犬吠層群を観察した.海食崖が5km以上続いている風景が大変印象的で,波による侵食を防ぐために防波堤が設置されている.九十九里浜にも砂浜の砂の移動を食い止めるために沖合に波消しブロックがいくつも並べられていた.この犬吠層群にはテフラが多く狭在し,これが房総半島の上総層群と細かく対比されていることが紹介された.それぞれのテフラは細粒なガラス質のものから粒子の大きいものまでさまざまであった.最後の露頭では屏風ヶ浦の上に登り,不整合を観察した.不整合といえば面状に広がるものでありながらこれまで側方からの線としてしか見ることがなかったが,今回は上位層を削ることで面として見ることができた.不整合より上では斜交葉理の発達する前浜の堆積物を観察した.
 2日間という短い時間ではあったが,自分の目で見て肌で感じることのできた貴重な時間だった.このような機会を提供してくださった関東支部幹事の方々に感謝すると共に,現地でご指導いただいた安藤先生,露頭整備に尽力された茨城大学の学生の方々にはお世話になるばかりであった.いろいろな人たちとの交流の中で自分自身が成長できるように,今後とも巡検や学会には積極的に参加しようと思う.

 
 
巡検の様子(撮影:青野道夫)

下部中新統最上部夫婦ヶ浜層の露頭

古銅輝石安山岩をたたく参加者

銚子層群君ヶ浜層のHCS砂岩の全面露頭を前に
安藤先生の説明を聞く

銚子層群犬吠埼層のストーム性HCS砂岩

犬吠埼周辺には
このような立派な説明看板が整備されている

白亜系の基盤を成す愛宕山層の露頭を前に
説明を聞く参加者

夜の講義の後の懇親会

犬吠層群横根層と香取層との不整合を見る

急遽、砂浜での堆積学実習

展望台から九十九里浜を望む

屏風ヶ浦の大露頭で
犬吠層群小浜層のテフラを観察する

犬吠層群春日層のタービダイト砂層を観察する

犬吠層群春日層と香取層の不整合面を探す
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