阪神淡路大震災から10年,地震学・地震地質学・耐震工学の到達点 2004/05/15
 2004年関東支部講演会を,5月15日午後,東京都北区“北とぴあ”を会場に開催いたしました.今年は,阪神淡路大震災から10年を迎える年にあたります.その間に,大震災での貴重な教訓を踏まえて,地震学・地震地質学・耐震工学の分野で精力的な研究が続けられ,めざましい発展を見ました.そこで今回は,大震災から10年を迎えて「地震学・地震地質学・耐震工学の到達点」をテーマに講演会を開催いたしました(参加者52名).
 講師に,工学的見地から地震動と地下構造の関係や地震・火山・豪雨の複合災害と地域社会,地形地質環境との関わりを長年研究されている瀬尾和大氏(東京工業大学大学院),理学・防災科学の広い見地から活断層を精力的に研究されている山崎晴雄氏(東京都立大学大学院),世界最速のコンピュータを駆使し地震波動シミュレーションを第一線で研究されている古村孝志氏(東京大学地震研究所)を迎えました.
 瀬尾氏からは,「大都市地下深部構造調査と耐震工学の課題」と題して,苫小牧の石油タンクのスロッシング現象でも原因となった,最近注目されている長周期地震動の視点から,それを引き起こす地下深部構造とそれに共振し甚大な被害を受ける建築構造物について貴重な説明を頂きました.山崎氏からは「活断層研究の到達点」と題して,M6.5以下の地震では地表に断層が現れない従来の常識を覆した2000年10月の鳥取県西部地震(M7.3)を教訓に,活断層評価では,より広い分野での情報収集(古地震の研究,地形面や第四紀層の詳細な編年対比)が必要であるとの説明を頂きました.また,古村氏からは「日本列島の不均質地下構造と地震波動伝播の数値シミュレーション」と題して,海洋研究開発機構のコンピュータ「地球シミュレータ」を使用した研究で深部三次元地下構造が地震波動伝播メカニズムに大きな影響を与えていることが明らかになり,深部基盤構造調査の重要性,強震観測網の一層の整備の必要性が増していることについて説明をいただきました.講演要旨の残部が多少あります.ご希望の方は支部まで申し込み下さい.(e-mail: geo-kanto@edogawa.home.ne.jp
(関東支部幹事 緒方信一)


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